超進化ステージ「デジモンアドベンチャーtri 超進化ステージ「デジモンアドベンチャーtri

スペシャルインタビュー

東映アニメーション 関プロデューサー×演出家 谷賢一

「デジモン」の生みの親である東映アニメーションの関プロデューサーと舞台「デジモン tri.」で脚本・演出を務める谷賢一さんによる、スペシャル対談をお届けします!「デジモン」誕生秘話から、「デジモン」に対する思いをお二人にたっぷり語っていただきました。

デジモン舞台化のお話を聞いていかがでしたか?

僕は正直、微妙に世代がずれているので、デジモンを見たことがなかったんです。 舞台化のお話を戴いてから初代テレビシリーズと映画シリーズも含め、全て見たんですが、こんなに何度も泣かされるとは思いませんでしたね。 人物の成長とデジモンの進化がうまく絡み合ったシナリオで、 その進化と成長に様々なものを重ね合わせて観ていました。自分の子どもの頃のことはもちろん、自分の息子のことだったり、今一緒に仕事をしている若い俳優たちのことだったり。 大人になってから観たせいか、「人が成長していく」ということを、色んな視点から見ることができました。 デジモンという作品の素晴らしいところは、成長と進化の描き方、そして人間とパートナーデジモンたちの繋がりだと思うんです。そこはお話としてきちんと描きつつも、舞台で表現するとなったとき真っ先に「デジモンどうするの?」と疑問に思うと思うんですよね。演出家としてはそこにとても挑戦心をそそられた。 そこをうまく逆手にとって、「こんな表現の仕方をするのか!」という舞台だからこその驚きをみせたいと思っています。

今のお話に出てきましたが、お客さんも気になっていると思います。ずばりデジモンの表現について教えてください

今、老舗の人形劇団である「ひとみ座」さんに協力を依頼していまして、ひとみ座さんに人形の設計・造形から操作まで、監修をお願いして稽古をスタートしています。

ぬいぐるみですか?

ぬいぐるみと言うと違うのですが、パペットと言っても違うし……、動くフィギュアというイメージが近いでしょうか。とてもリアルな造形に仕上げて戴いています

※製作途中の写真が登場する

これが動きます、大きさも実際の設定に合わせて作っています。 すっごいお金かかっています(笑)そして手間と時間も相当。 デジモンをやるとなったとき、人形を使うというのは一番最初に決めていました。 よくある推測として全シーン映像で登場するんじゃないかと思うと思うんですよ でも初代のデジモンアドベンチャーを全て見させていただいたとき、 太一の隣にいるアグモンというのは、デジタルノイズの固まりなんかじゃなくて、 むしろデジタルなことを全くを感じさせない、生身でアナログな質感があるべきだと思ったんです。 だから最初にお話を戴いたときから「この案でやれるのなら」ということを絶対条件として、こだわって打ち合わせを進めてきました。

パートナーデジモン全てが登場するんですか?

8体、全てステージ上に出演します!  進化したあとのデジモンの演出にもご期待頂きたいです。

日本中で公演しなきゃ勿体ない(笑)

ストーリーについても少しだけ聞かせてください

物語は高校生になった彼らが、また8月1日がやってくるというその日、 はじまりの場所になったキャンプ場へ行ってみよう、あのときの自分たちに1日だけでも戻ってみよう、というところからスタートします。 tri.を見て太一たちの悩み方のリアルさにとても共感したので その設定を活かしながら、また別の角度から子ども時代の自分たちと今の自分たちを見つめ直すお話にしたいと思いました。

シナリオは今回の対談の為に読ませていただき、せっかくなので一言、二言思ったことをお伝えさせていただきました(笑)
それからデジモンと子供たちの関係性についてもレクチャーさせていただきました(笑) デジモンというモンスターと人間の子供の関係を一言で「パートナー」と言いますが じゃあ「パートナー」ってどういうものなんだ?と。 私たちが番組をつくっているときに『魂のパートナー』という言い方をしていまして それは何故かというとデジモン達はパートナーの子供たちのことを決して否定しないんです、全てを受け入れる生き物なんです。 たとえ悪い子だったとしても受け入れるんですよ。 子供にとって本当に自分を受け入れてくれる存在というのがデジモンという「パートナー」なんです。

関さんから戴いたお話はシナリオにもそのままいい方向に反映したいと思っています。 僕も自分なりにこの人物、デジモンはどんなことを考えているんだろうと考えて書いていたのですが、すごくシンプルな切り口で「こういうものだよ」と教えて戴いたので、そこは活かしていきたいですね。お客さんにとっても一番感心があるのは、8人の子どもたちとパートナーデジモンたちがちゃんと寄り添っているか、ということなんじゃないかと思うんですね。

今回はtri.のサイドストーリーとのことで、脚本がオリジナルと伺っています。 シナリオを書くうえで苦労した点・楽しかった点などあれば教えてください。

本当に、この一か月で痛感したことなのですが… 僕も原作があってお芝居を作るということは今までに何度かあったのですが それは原作のストーリーを舞台用にアレンジするという形が多かったんです。 でも今回は原作のキャラクターは借りるけれども、筋書きはゼロからで、人が作ったキャラクターの言葉を書くというのは初体験なんですね。その難しさは凄くありましたし、今でも感じています。また同時にアニメの脚本家の方たちはどうやっているんだろうと疑問も湧いてきました。彼らも設定にある同じキャラクターを、数名で分担しながら書いていますよね。それって、すごいことだなと。 ただ当然、苦しい、しんどいことばっかりかというとそれだけではなくて、うまく話が流れ出すと、書いている台詞が原作の登場人物たちの声で聞こえてくる、みたいな瞬間を味うことができて、それはとても面白かった。人さまが作った人物の台詞を、僕みたいな演劇畑の人間が引き継いで書く。そしてそれを東映さんにチェックしてもらって、さらに近付けていく。つまり、みんなで共有してこの人物たちを生み出しているわけです。特にデジモンの場合、ある1人の作家・監修者がいるんではなくて、みんなの中に太一がいてヤマトがいて、その中から台詞が生まれてくるというのは面白い体験でした。

「デジモン」はこれまでにも本当に沢山の方々が携わっていると思います、そんな作品をつくっていくうえで関さんからアドバイスなどありますか?

私の場合は三人の人がいたとして、三人の共通項が何かなと、考えるんです。例えば監督が一人、アニメーターさんが一人、シナリオライターが一人いるってなかで三人それぞれ頭に描いている太一なら太一がいるわけですよね。その人たちが意見を出すとみんな微妙にズレが生じてるんです。大抵の場合。 でもその中の共通項は何だろうって探しているときが一番楽しいです。 その違いがキャラクターの幅になると考えているからです。抑えているポイント、キャラクター共通項が一緒であるならば、その微妙な違いというのはむしろキャラクターの幅として前向きにとらえることができるんじゃないかなと。 私だって、新入社員や同僚と話すとき、家に帰って家族と話すときでそれぞれ微妙に使う言葉や態度も違うわけです。 でも人間ってそういうものだと思うんですよね、だから一人の人間を描くというのは 考える人によって微妙な違いというのが出てきて当たり前だし、そこが面白いと思ってもらえたら。

まさに近い話は演劇の稽古場でもよくでてきます。例えば若い俳優なんかとやってると、どうしても自分の役を表現しようとして、自分の役にばかり意識が行ってしまい、同じ喋り方や同じ性格をやろうとするんだけど、それだと役が立ちあがってこない。 そんなとき僕はよく、そうじゃない、相手に何を伝えるか、相手をどう動かすか、相手をどう思ってるのか、そこを大事にしてやりなさいって話を稽古場でするんです。 自分のことじゃなく、相手のことを考えると、台詞が全然違った響きをもって出てくる。 関さんが仰った通り、人間は色んな顔を持っているし、他者と付き合うことで出てくる自分を通じて、こんな自分もいたんだ! って発見することができたりする。だから関さんの仰ることには心から共感します。 デジモンの稽古場でも、そういう演劇の基本と奥義はきっちり追求していきたいです。

あまりこうでなくてはいけないと狭い型に収めることだけを考えてしまうと 何の発展性もない、ただ単になぞっているだけの作品になってしまうと思うので 谷さんの中だったり、演じて下さる役者さんたちの中に、一回はキャラクターを取り込んでいただいてそれを彼らの体と声を使って『芝居』という形で誰かに、そのキャラクターを伝える、媒介していただけると有り難いと思います。

そう考えると関さんたちが生み出したキャラクターが、時代を超えて受け継がれ、高校生に成長までして、全く違うフィールド(舞台)で今、立ち上がりつつあるわけですよね。 それって僕は体験したことがない感覚なんですが、どういう気分なのか、ぜひ関さんにお伺いしてみたいです。

そうですね、これまでにも、どこか心の中でちょっと私の考えている太一と違うなとか当然思ったことはあります。でもそこにはそこで新しく生まれた太一が存在しているわけだからその子がこれから先、どういうふうに育っていくかは楽しみなところがあります。また今回は谷さんが作ってくださる舞台のなかで太一やヤマトがどういうふうに 変わっていくのかなっていうのも観たいなって思っています。 プロデューサーの宿命ですが自分が作ったときは、自分にとってはベストなのですが あるときから先は誰かの手に委ねるっていう作業なんです。 プロデューサーがこうしたい、と考えていてもシナリオライターが違う人物像を描くときもありますし、更にそれを演出がまた変えたりもします。 微妙に変わったキャラクターに声優さんが声というかたちで芝居をつけていくので 作っていく過程のなかで、紆余曲折を経ながら育っていくのがキャラクターだと思っているんですよ。

中々、演劇の現場では味わえない感覚ですね。演劇だと作家と演出家を兼ねている場合も多いですし。例えばシェイクスピアを題材にやります、演出は僕です、となった場合、「今回のリチャード三世はこういう人です」と僕が説明して、それに近づこうと俳優やスタッフもやってくれます。もちろんそこに俳優さんの個性やアイディアも関わってきますけど、演出家の中に答えがある場合が多い。だから関さんの言うような形で、全員の間からちょっとずつ人物が立ち上がってくるというのは凄いですね。

オリジナル作品の特徴だと思います。 子どもが保育園で友達と遊んだり、家族と過ごしたり色んな人と関わっていくなかで成長するのと一緒で色んな人が関わることによって大人になっていく。 色んな人が関わるから10年、20年、30年先でも作品は色褪せないんだと思うんですよね。 つまり私が、私が生んだ子だからって言って家から一歩も出さないで、子供を手元に置いておいたらその子は相当歪んだ子になってしまうと思うんですよね。だから私は作品を人の手に委ねるというのは本当に、その子(作品)を社会人として一人前にすることだと思っています。だから「デジモンアドベンチャー」を社会人として一人前にするためには親としては手放さないといけないんですよ。(笑) 映画になったら映画として成功してもらいたいし、舞台になったら舞台として成功してもらいたい。 テレビを作ったときにもみなさんに受け入れてもらいたいという思いで作りましたし、 映画のスタッフも映画としての成功を収めたいと思っていると思いますし 舞台になったら舞台になったで絶対そういう思いを持って作って下さっていると思うので、 そうやってこの子たち(作品)は成長していくんですよ。

その思いを受け継いで、頑張りたいと思います。

貴重なお話をありがとうございました。最後にお客様へのメッセージをお願いします。

ぜひ舞台の魂というものに、忠実にやりたい。そこには演劇人として誇りがありますし、演劇としての魂を持った作品にしたい。そういう演劇屋としての思いと同時に、ずっと紡がれてきた「デジモンの魂」にも忠実でありたいと思います。どっちの魂も1人で作れるものではないので、演劇にとってもデジモンにとっても胸を張れるような作品にしたいと思います。その上で、お客さんの反応はとても気になるところなので、是非観に来て頂きたいです。

テレビから時を隔てて映画になり、また今回は舞台の上でデジモンを観れるというのは最初に関わった人間としてこんなに幸せなことはございません。 私も絶対に観に行くぞと思っています。 皆さんに楽しんでもらえたらいいなと思いますし、アニメと違うことがあってもそれも楽しみのうちって思ってもらえると一番いいなと思います。 これだけ色んな形で「デジモン」というシリーズが受け継がれてきているので 広い意味での「デジモン」ファンだったら絶対楽しめるんじゃないかなと思います。 皆さん、劇場でお会いしましょう!(笑)